#764

急に10度近くも気温が下がったおバカな気候のせいで風邪をひいちゃった。呆れつつあなたは心配モード。なんだかそれが嬉しい。「うどんくらいなら食べられるだろ?」「うどんよりそばがいいな」「もう煮てるぞ」「あなたのそばがいいの」「なっ……ばかっ」赤…

#764

急に10度近くも気温が下がったおバカな気候のせいで風邪をひいちゃった。呆れつつあなたは心配モード。なんだかそれが嬉しい。「うどんくらいなら食べられるだろ?」「うどんよりそばがいいな」「もう煮てるぞ」「あなたのそばがいいの」「なっ……ばかっ」赤…

#763

その教会は奇妙だった。建物は朽ちるばかりだというのに、庭だけは今も花が咲く。しかしこれはなんだ。薔薇と百合が睦み合うかのように絡み、互いを傷つけ、そして咲く。断罪の茨と純血の白。赦されざるカタチ。ああ、そうか。ここは禁忌の恋の眠る場所。聖…

#762

今日はボクが生まれた日。キミが好きだと思い知った、初めての日。

#761

もう恋なんてしない、そんな歌があったかしら。この人と添い遂げると思っていた恋に破れてからは正にそんな心境だった。傷つかない恋愛なんてないはずなのに、もういいと目を閉じて心を塞いだ。それなのに。貴方に出会って私の視界は広がり彩られる。もう恋…

#760

曇り空はキライ。あなたと同じ月を見られないから。

#759

いつものピアスとは別に貴方が見た事のないピアスをひとつ持ってきた。ベッドの傍に落として貴方の反応を確かめる為に。掃除の振りして落とそうとしたけれど、そこにはもう別のイヤリングがあった。ふぅん、そう……やっぱりそうなの。あなたと相手、どちらを…

#758

鋼鉄の乙女は今日も規律正しく折り目良く礼儀作法に則って仕事をこなす。メンテナンスが滞り、視野に障る為眼鏡をかけたものの、屋敷内だというのにどうも落ち着かない。その原因を探り当てた乙女は無機質な表情を微かに歪めた。「……主様、盗撮は犯罪です。…

#757

みゃぁ。子猫が鳴いた。寂しそうな心細そうな、泣きそうな声。薄明かりの中、そっと撫でてやる。まだひとりでは寝れないのだろうか。温もりが恋しいのだろうか。みゃ。もう一度鳴く。仕方ないと思いつつも私はタオルごと抱き上げ、腹に抱いた。温もりが欲し…

#756

鋼鉄の乙女は今日も規律正しく折り目良く礼儀作法に則って仕事をこなす。主のうっかりで定期点検が滞ってしまった。差し障りがないよう注意を払うも不意に視界が歪む。応急処置を施した乙女は無機質な表情を微かに顰めた。「……主様、眼鏡を掛けただけですの…

#755

スーツの窓口、ジャケットから覗くシャツのVゾーン。そこを彩るネクタイの色柄、スーツとの組み合わせ、結び方である程度人柄がわかってしまう……というのは一般論。ねえ、知ってる? ネクタイっていろいろ使い道があるのよ。こうして引き寄せて、緩めて、そ…

#754

ドッペルゲンガーと出会ったら互いのアイデンティティをかけて戦わなければならない。負けた個体は生きていく資格を失ってしまうのだ。だが。「殺し合いなんざスマートじゃないんだよ。どうせなら共生共存と行こうじゃないか」仕掛けを待つ詐欺師の男はにや…

#753

逢いたいと想う気持ちが、願う心が罪になるのならば、身を切り裂いて殉じましょう。そして逢いたいというその祈りはせめて、月へと還しましょう。月の雫があの人の元へときっと届けてくれるのだから。

#752

鋼鉄の乙女は今日も規律正しく折り目良く礼儀作法に則って仕事をこなす。賑やかな主とは対照的に大人しい動物たち。猫は気怠げ、小兎は眠たげ。ああ、そうか。雨の季節が近いのだ。二匹を見つめる乙女は無機質な表情を微かに綻ばせた。「……主様、雨の季節に…

#751

転た寝をすれば額に冷たい感触。また子供が碁石か小石で悪戯をしているのかと振り払えば鈍い痛み。薔薇の刺で裂いたような傷に浮かび上がる血は体温計のようだ。いや、温度計の方だったか。朔月を窓に墓石を扉に死人が訪れるなら。「来いよ、誰よりも恋しい…

#750

小石を蹴るように碁石を爪弾いた。乾いた音を立てて墓石に当たる。罰当たりだろうが構うもんか。化けて出るなら来いよ。お前との勝負は一度も着いてないんだ。これじゃ恋しい相手に焦がれてるみたいじゃないか。夏日を示す温度計が虚しく揺れ、空には伽藍の…

#749

旧暦の朔日で朔、新月の今日、神社にお参りすると願い事が叶うんだっていう。藁にもすがる思いで行ったら外陣の前で碁を指してる二人がいた。おじいさんと若い男の人。「おや珍しい客人だのぅ」「それに恋しき人の悩みを抱えている」見透かされてあたしは赤…

#748

囲碁を知らない私に貴方が教えてくれたのは連珠だった。碁石──珠が盤面できらきらと輝く様が好き。冷たい黒、滑らかな白、どっしりと構えた濃緑、儚い淡緑。そして「とっておきだよ」と見せてくれた瑪瑙と翡翠。私は貴方ではなく珠に魅せられたのかもしれな…

#747

鋼鉄の乙女は今日も規律正しく折り目良く礼儀作法に則って仕事をこなす。季節の移り変わりに合わせ、屋敷内のカーテンが掛け変わる。重厚で落ち着いた色から明るく柔らかな色へ。その様子を見守る主に乙女は無機質な表情を微かに綻ばせた。「……主様、またひ…

#746

とってって。「ん?」つんつん。「あ、悪ぃ。水なくなってたか」ぐりぐり。「あーもー、悪かった。悪かったって」ぷい。「頼むから拗ねるなよ」ぷんすか。「だから怒るなって」……すりすり。「ん、良い子だ。俺のお姫様」……かぷっ。「って。気まぐれにも程が…

#745

生まれ落ちた時からひとりきりで、ただなく事しかできなかった。泣いて鳴いて啼いて。そんなぼくの声を聞いてくれたのは、きみ? #twnovel 気になったから旅に出てみたの。耳につく哀しげな声。もう、オトコノコでしょ? いつまでもないてないでトモダチにな…

#744

その世界には“生”というものがなかった。充満するのは“死”の臭気。命なき偽りの生、屍たちの世界。死せる者たちは争い、喰い合い、果てなき闘争を続ける。何故。その理由を誰も知らない。そうする事だけが至命のように刻み込まれた意識。その果てに本当の命…

#743

「おかえり」帰りの合図をするとさほど時間をかけずに戸を開けてくれた。待っててくれたのがなんだか嬉しいな。部屋に一歩入ったところであたしの動きは止まった。──誰、その女。あたしというものがありながら浮気!? 許せない!「猫怒ってる?」「見てない…

#742

鋼鉄の乙女は今日も規律正しく折り目良く礼儀作法に則って仕事をこなす。最近静かだった書斎が何やら騒がしい。こういう時はろくな事がないのだが、意を決して扉をノック。眼前に広がる惨状に乙女は無機質な表情を微かに顰めた。「……主様、片付けられないな…

#742

鋼鉄の乙女は今日も規律正しく折り目良く礼儀作法に則って仕事をこなす。最近静かだった書斎が何やら騒がしい。こういう時はろくな事がないのだが、意を決して扉をノック。眼前に広がる惨状に乙女は無機質な表情を微かに顰めた。「……主様、片付けられないな…

#741

旅が終わらない。いつ始めたかなんてもう、遠い昔の事のように思える。トランクひとつだった荷物はコンテナひとつに膨れあがった。ゴールはどこだろう。抱えた荷物は重すぎて、あたしは遠くを見つめる事しかできなかった。 http://twitpic.com/1n5rd4写真とt…

#740

我が家の飼い猫が家出した。いや、正確に言うならば旅に出た。残された書き置きには簡潔に一言、『どらごんをたおしてきますにゃ』。君は黒猫だけど普通の猫だよね? ねえ、なんで? #twnovel 半年後、帰ってきた猫は、同じくらいの背丈の小さな白い竜を連れ…

#739

鋼鉄の乙女は今日も規律正しく折り目良く礼儀作法に則って仕事をこなす。季節毎の花が咲くたび指折り数えるのは、仕え始めてからの日々。ひとつたりとも無為な日たり得ぬ日々。巡る思い出に乙女は無機質な表情を微かに綻ばせた。「……主様、これからもお傍に…

#738

月がほしい、とあの人は言った。手が届かない天空。無理だとわかっていてあの人は僕に言ったのだ。でも、僕は。 #twnovel 僕は原石を砕き削ぎ、結晶を磨いた。夜空に見立てた紫金石の杯に浄い水を満たして月を待つ。それが中空にかかる頃、杯には満ちる月。…

#737

鋼鉄の乙女は今日も規律正しく折り目良く礼儀作法に則って仕事をこなす。古書から手繰るいにしえの物語。ある王は国と民を守るべく自ら禁を破ったという。私ならば、と思案する乙女は無機質な表情を微かに綻ばせた。「……主様、私は盾にも矛にもなりましょう…