2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

#717

鋼鉄の乙女は今日も規律正しく折り目良く礼儀作法に則って仕事をこなす。春雪の後は晴れるも、油断はできない。上着を羽織らぬ薄着姿の主に抗議しようとしたが、にやりと笑んで出されたショールに乙女は無機質な表情を微かに赤らめた。「……主様、そ、そうい…

#716

@humimaro 女「私と仕事、どっちが大切なのよ」男「逆に聞くけど、仕事をしてない俺を愛してくれるのかよ」女「専業主夫になってくれたらいいわ」女は辞令を受け、昇進していた。@humimaro氏の出したお題に乗っかってみた

#715

鋼鉄の乙女は今日も規律正しく折り目良く礼儀作法に則って仕事をこなす。季節はずれの春の雪。猫と子うさぎで暖を取る主にそっと掛けるショールは、ずっと渡しそびれていたもの。訪れた僅かな沈黙に乙女は無機質な表情を微かに赤らめた。「……主様、一応、手…

#714

「にゃ」黒猫さんが分厚い本をしぺたんとねこぱんちしてた。ダメだよ、と止める間もなく繰り出されるぱんち。「にゃにゃん」ぱららっと捲れるページ、次いで上がる白い煙。「これでやっとおはなしできるにゃ」え!? 僕の頭にお揃いの黒い猫耳。その本はネコ…

#713

お目付役の私がいながら姫様にあのような剣を持たせてしまうとは迂闊だった。商店店主の甘言許すまじ。姫様はよく『ただ守られるだけは嫌です』と仰っていたが。まああれだ。姫様がお元気ならばそれで良い。敵を即死させてしまう剣を携えておられても、だ。…

#712

言葉にできない。たった四文字なのに。言ってしまえば全てが終わるのに。声にならない。終焉を望んだのは、私。けれど躊躇っているのも、私。あなたの乾いた唇が薄く開く。──言わないで。その言葉を言わないで。声にしないで。「サヨナラ」なんていらない。…

#711

「よ、どうだい景気は。悪い? そう簡単にゃ上向かねぇだろうな。愚痴も言いたくなる? 莫迦言ってんじゃねぇよ。愚痴なんざやる事やり尽くしてから言うもんだ。お前さん本当にやりきったのか、胸を張れるほど。ああ、男が簡単に諦めちゃいけねぇや」電脳ペ…

#710

貴方を見送って久しい。共にいられない時間ばかりがいたずらに過ぎていく。心がほんの少しだけ疲れてしまった時。届いたのは一通のメール。遠い貴方からの贈り物は、オレンジ色に染まる景色たち。ばかね、もう。今日がオレンジ・デーって貴方に教えたの私な…

#709

少し風のある天気のいい日、傘を持って出掛けた。二人で歩く桜並木。あなたは雨なんか降らないのに、なんて笑うけど、雨は降るのよ。さあっと風が木々の間をそよぐ。ぽんと開いた白い傘に降り積もるのは、薄紅色の花びらたち。ね、雨は降るのよ。この季節だ…

#708

「……のう」「ん、なんじゃ?」「わしゃ確かにお主を封じたよな?」「ああ、そうさの」「それが何故儂の前におる」「愚問じゃ、和尚。旧友を訊ねるに理由はいらぬと言ったばかりであろうに」「答えになっておらん」「細かいのぅ。そなたに逢いとう思うたまで…

#707

「幾久しゅう、和尚。そなた老けたのぅ」「儂は人の身であるからな。そういうお主こそどうした」「旧友を訊ねるのに理由が必要かえ?」「わしゃお主を封じたはずだが」「よいよい、怨んではおらぬよ。妾とて丸くもなる。そなたと歳月によってな」「言ってろ…

#706

いくら無理矢理のお見合いだからって、友人は私を身代わりに行かせた。相手が佳い人そうで私の好みなものだから余計に申し訳ない。二人きりになった時思い切って事実を告げたら、なんと彼も代理で身代わりだった。お互い堪えきれずに笑い出す。こんな出会い…

#705

娘は男をよく見た事がない。幼い頃、無理に親と引き離されたのだ。だから男の眼が何色なのかなど知りもしなかった。藍玉をかしりと咬んだ時。「海の匂いがする」「ここは海から随分離れているぞ?」「あなたの眸が海色なのね」紅と白の娘を見つめる男は、遙…

#704

鋼鉄の乙女は今日も規律正しく折り目良く礼儀作法に則って仕事をこなす。執務室へと運ぶお茶はいつもと違うもの。よくよく見れば茶器も違う。物珍しさから目を丸くする主に乙女は無機質な表情を微かに綻ばせた。「……主様、サクラ茶です。淡い色合いが春を思…

#703

柔らかい素材や生地、淡い色合いの服が着たくなったらきっと、春が近い合図。そんな中、不意にピンク色を身につけたくなった。普段は元より、春でも絶対に着ようと思わない色なのにどうしてだろう。そんな疑問はすぐに解ける。ああ、そうか。わたし今、恋し…

#702

深夜に食べる禁断のおやつ。ひとくち、ふたくち。指先についたものを舐め取った時、ふと考えた。全部食べるのはやめておこう、明日二人で一緒に食べよう。そっちの方が絶対おいしいから。だからこの食べかけは証拠隠滅で食べちゃうんだからね。

#701

「ん、っ……もう無理、飲めない。量多すぎ」「これしきで音を上げるなんて、らしくないね」「だって今日、ホントに量多いんだもの。どうしたの?」「そりゃあ君の為……じゃダメ?」「理由になってないわよ」 #twnovel 「週末のお花見に持ってく紅茶選びに付き…

#700

鋼鉄の乙女は今日も規律正しく折り目良く礼儀作法に則って仕事をこなす。うららかな昼下がり。仲良く遊ぶ猫と子うさぎ──と、主。執務はどうしたのかと問えば、意外な返答に乙女は無機質な表情を微かに綻ばせた。「……主様、サクラが咲いたからお休みだなんて…

#699

こうして書き記すのはきっと、誰かに読んでもらいたいから。誰かの目に止まってほしいから。ちっぽけな「わたし」という存在が、ここにいたんだよっていう証にしたいから。だからこれはきっと、未練。心のどこかで止めてほしいっていう願望の表れ。わたし、…

#698

淡い色に染まる花が枝に咲く。「あれはなんという花?」「あれは桜。春を告げ、死者を糧に咲く花」淡い色に染まる花の枝を手折る。「ああ、雪白に血を散らしたかのよう」「そう、雪花に血をかよわせたかのよう」淡い色に染まる花の枝が朽ちていく。「だから…

#697

鋼鉄の乙女は今日も規律正しく折り目良く礼儀作法に則って仕事をこなす。件の子うさぎの寝床として、気に入っていたグラスを取られてしまった主は不機嫌気味。そのどちらの様子にも乙女は無機質な表情を微かに綻ばせた。「……主様、お気に入りが同じだなんて…

#696

道を歩いていたら桜色の石が落ちてきた。なんだろうと思って拾うと、道の先に黄色い水仙が。首を傾げながらそれを拾うと、また石が落ちてきた。今度は透明な桜色。はて、なんだろう? #twnovel それは遠回しな愛の告白。ローズクォーツも水仙もクンツァイト…