2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧

#117

……さて、次のニュースです。気象庁は来年度より気象予報士による予報制度の変更を施行するとの発表を行いました。これまでによる知識やデータに囚われない、匂いや感触など、五感による予報を強化するとの事です。これにより数年は混乱が起こるものと政府は…

#116

華美なものと無駄な装飾を省いたら、言葉はごくごくシンプルに、そしてありきたりなものとなってしまった。でもこれが一番、君に僕の想いを伝えられるんじゃないだろうか。煌びやかも情緒もないかもしれないけれど。それでも。伝えたい想いは、言葉は。たっ…

#115

妖怪「すねこすり」は無害だった。無害なり悩みを抱えていると、ふとお山に帰りたくなった。仲間に散々除け者にされても、やっぱりあの場所と皆が大好きで、自分の故郷なのだから。でもちょっと気後れしてしまう。そんな時だった。お山から報せが届いたのは。

#114

妖怪「すねこすり」は無害だった。今では愛玩動物として身を立て成功しているが、それでもいっちょ前に悩み事があった。それは、飼い主達が個性を求めるようになったからだ。トリミングやカラーリングはまだマシな方。酷い時にはデコすねこすりなんてものま…

#113

祈りなさい、神の為に。祈りなさい、世界の為に。祈りなさい、貴方の隣人の為に。祈りなさい、そして私の為に。貴方は貴方の為に祈る事は許されず、絶えず誰かの為に祈らねばならない。それが神が貴方に与えたもう罰。それが悪魔が貴方に与えたもう祝福。さ…

#112

叢雲より出ずるは鈍色の鋼鳥。其は陽光に輝き、月光に艶を帯びる。理想を掲げ、信念を胸に抱き。陰陽の理を宿した鳥は鋼鉄の翼携え、蒼天と夜天の狭間を征く。如何な現実に打ちのめされようと、その翼は折れる事なく。やがて訪れる輪廻の輪にさえ逆らわん。…

#111【番外編】

【ちゅいのべる】唇に媚薬/月を見てた/私を見て/届かない手/泣きたい日/嫌いはウソ/好きが本当/抱き締めて/嗤う死体/呟きしろー/栞が伝言板/携帯恋愛/宇宙遊戯/涙は武器/別れの一行/笑顔は仮面/仮初めの恋/板挟みの情/無情なる愛/無垢な…

#110

『おはようからおやすみまで、ゆりかごから墓場まで。24時間いつでもどこでも貴方を見守る警備サービスです』そんな広告を見つけた。……一歩間違えばこれって、セクハラにストーカーじゃない?

#109

茹だりそうなくらい火照った身体を冷まそうと浴室のドアを開ける。タオルを取ろうと手を伸ばしたら、そこに降りてきたのは一羽の白い鳥。ソラからのお使い、伝令役。役目を終えると鳥はふっと掻き消えてしまった。……ほんとに? 目許に熱いものがこみ上げた時…

#108

初めて体を売ったのは十歳の時。そして体を失った。初めて心を売ったのは十五歳の時。奪われるようにして失った心によって、なにも感じなくなった。初めて魂を売ったのは二十歳の時。贄として差し出され、召喚された緋い悪魔と交わした契約。私の孤独を癒す…

#107

初めて体を売ったのは十歳の時。縄張り争いに疲れた男の腕の中にいた。幾人もの腕と温もりを渡り歩こうとも、あの時抱いた言葉にもできない感情は抱けなかった。そして何年かの後。些細な諍いから引き起こされた抗争に巻き込まれ、あたしは引き金を引いた。…

#106

熱を交換する。融け合っていく。この躯も、この心も、堕ちていく。悔悟は決意となり、哀しみは歓喜と変わり果てる。ああ……堕ちていく。躯も心も、そして翼さえも染まっていく。高みへと押し寄せる波に、私は全てを投げ出した。罪も罰も。貴方の為ならば……こ…

#105

あれから、笑えなくなった。せんぱいの事を思い出すと胸がどうしようもなく痛くなって、それから逃げるように戦技に打ち込んだ。独りに、なりたくなかった。もう泣きたくないのに……どうして。独りきりになれば涙が零れる。だから、泣くのはここ。浴室からい…

#104

「悪魔をこ」「まあまあ、そんな話よりももっといい話をしようじゃないか。幸い今夜は朔の夜。君だって今夜くらいは脆弱な人間の言葉に耳を傾けようって大らかな気持ちにもなるだろう? いい話って言うのは他でもない。君と俺の事なんだ。俺には一目でわかっ…

#103

「悪魔をこ……」響くのは乾いた銃声。「って、あぶねーな! つか最後まで言わせろ!?」「うるさいわね! 悪魔も人間も嫌いなのよ!」捲し立てるようにフルオートで乱射される銃弾。狙いは甘いのか、致命傷にも至らない。「……なんか」「へ?」「……男なんかぁ…

#102

「あくまをころしてへいきなの」舌っ足らずの悪魔はそうのたまった。幼い少女の姿、白いケープコート。どこからどう見ても悪魔にも脅威にも見えない。「しんじてないなら、こうしてあげる!」やおら振りかぶったかと思えば、コケた。ぷるぷる泣き出したそい…

#101

「人間を斃したらいけないなんて、誰が言ったの?」美貌の悪魔が嘯く。「同じ事さ。悪魔を斃してはいけないと、誰が言った?」俺は長剣の柄を握り直し、嗤った。「なら踊りましょう? 最後の一人が息絶えるその日まで」悪魔の指先に雷光が宿ると同時、地を蹴…

#100

さらさらと流れ落ちる文字。それは物語のかけらたち。集まって形になって、また流れ落ちて。時には大きな波を生み出し。時には小さな繋がりを生み出す。 #twnovel 珠玉の雫たち。何色にも染まり、何色にも染まらない、皆の言葉たち。雫を集めて繋げていこう…

#099

彼がまず触れたのは、髪。ゆっくりと梳るようにその手指に一房絡め取り、滑らせていく。滑り落ちるほんの手前。指先は一房を優しく抱き締めるように包み、そして髪に落とされる口付け。それで、充分だった。どんな罰が待っていようとも、どんな未来が待って…

#098

あたしは主婦で人妻。あ、新婚だから新妻ね。でも、大事な大事な旦那様にも言えない秘密がひとつだけある。それは……実は、パートタイマーで勇者やってるんです。世界平和の為に戦う時間を、旦那様との甘い時間を過ごす為に使わせてよ!?

#097

嘘つきが二人いました。二人は口々に言います。「この道は危ない。進むのをやめろ」「この道は安全だ。行くといい」二人は互いに違う事を言います。ある時、何故と問われた二人の嘘つきは全く同じ事を言いました。「ここから出て行ってほしいだけだ」嘘つき…

#096

『仕事お疲れ様。駅から出たら空、見上げてくれる?』彼女から届いたメール。訝しみつつもその通りに夜空を見上げれば、ぽっかりと浮かんでる半月が見えた。月と星だけが瞬く空。それを見計らったかのように掛かってくる電話。「いい月は一緒に見上げたかっ…

#095

勇なき力は蹂躙。義なき力は暴力。志なき力は蛮勇。されば力なき正義は脆くも崩れ落ちるのみか──否、我らが力は武勇のみに非ず。我らが言、幻にして眩。弦にして現。手繰り寄せし言の葉、言霊の力、とくとご覧じよ。夢と現の狭間、とくとご覧じよ。

#094

あかいもみじをてにしたら、それはおうぎになりました。きいろいいちょうをてにしたら、それはおうぎになりました。ふたつのおうぎでかぜをおこせば、そらはまっさお、はれもよう。どんぐりやまつぼっくりのおべんとうをもって、みんなでぴくにっくにいきま…

#093

ひとつ埋めて、またひとつ。二人三日の夜道いき。睦み七夜の月の頃。矢番えの近衛出会う時。とうとう一人きり。ひとつ埋めて、またひとつ……

#092

陽炎に浮かぶ月に恋焦がれ、水面を覗く蜻蛉は密やかに涙を零す。その雫はいつしか水晶となり、哀しくも儚い滴を毀れ落とす。

#091

ゆらゆらと揺れるココロ 切ない気持ち抱くのは 秋の空が哀しくて それとも思い浮かべた 貴方のせい

#090

慟哭──哀しみを知った天使は、慈愛の存在ではなくなってしまう。それでも泣かずにはいられなかった。優しさと儚さ、愛を携えたのは過去。今この手にあるのは死を告げる断罪の鎌。「連れてってください」でも、どうして……うまく、笑えない。

#089

せんぱいが、いなくなった。帰ったんでもない。せんぱいだった存在が、いなくなったんだ。『堕ち』ていったのだと、全部の感覚が告げていた。おっきなあったかい手の感触に振り返った時、我慢できなくなった。生まれて初めて泣いた。声を上げて、いつまでも。

#088

奥の院の重い扉がゆっくりと開かれる。永き時を経て開かれたそれは、封じられしものを解き放つ証か。古の裁音を紡ぎし謳姫がそのかんばせを月光へと晒し出す。紗の衣擦れは淡く儚く、その音でさえ彼女の為に奏でられる。音を紡ぐ者にして音を裁く者。その爪…