#088

奥の院の重い扉がゆっくりと開かれる。永き時を経て開かれたそれは、封じられしものを解き放つ証か。古の裁音を紡ぎし謳姫がそのかんばせを月光へと晒し出す。紗の衣擦れは淡く儚く、その音でさえ彼女の為に奏でられる。音を紡ぐ者にして音を裁く者。その爪先が地を、捉えた。