2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧

#087

満ちる刻の調べに奏でるは魔宴の詩。献げよその身、永遠なる虚無へ。斬り拓かれし戦端を選び取るは稀なる歌声。歓喜を詠ぶその妙なる声音は時として訣死を詠ぶ災いなる声音とならん。謡えよ、謳えよ、虚構なる月よ。捧げよ、献げよ、無明なる空よ。今宵は魔…

#086

せんぱいは、来なかった。待っても待っても来なかった。ひとりぼっち、まちぼうけ。そっと頬を撫でるような優しい風の感触、あたたかな匂い。せんぱいはいってしまったんだな、って……その時になんとなくわかった。泣き出しそうなのを我慢してた時。頭におっ…

#085

「君って嘘つきだよね」「だって嘘と化粧で武装してるもの」

#084

「貴方って嘘つきね」「嘘でしか自分を表現できないからだよ」

#083

月が見えないと不安な気持ちになる。どうして、って貴方は笑うけど。この気持ちはきっと、女にしかわからないわ。どうして、ってもう一度貴方の声。答えは簡単よ。女は誰しも月に惹かれ、焦がれ、そして月の民の一人なんだから。そう、男が太陽の民であるよ…

#082

この身、この躯、この命。生まれ落ちたその時より囚われしものなれど。自由を、空を、風を知らぬものなれど。せめて天に届かせんと響かせるは弔いの歌。鼓舞の詩。歓びの唄。この声が謳う、詠う、謡う、唱う、全ては呪つき力帯びて災いにも護りにもならんと…

#081

あくる日、後輩との待ち合わせに歩いているところへ一陣の風が吹き込む。ああ、あの日もこんな風が吹いていなかったか。ふと思い出すのはあの出会い。出会うべくして起こった、偶然という名の必然。「御使いにしておくには惜しいんだがな」……あの時と同じ、…

#080

妖怪「すねこすり」は無害だった。何ができるかと言えば、人間の臑や膝にふかふかもふもふの体を擦り付ける事くらいだ。くすぐったさから稀に転んでしまう者もいるが、害と言ってもその程度。仲間からは除け者扱いされてしまったすねこすりは一計を案じ、愛…

#079

【チチ キトク / スグ カエレ】きゅっきゅっきゅーっと黒マジックで絵馬に書くのは、どれだけ昔に使い古されたネタかと言わんばかりの電報もどき。用があれば絵馬にメッセージ残せと言ったあいつが悪い。ストライキしているあいつが悪い。参拝者が絵馬見て腰…

#078

逢えない日には、メールで言葉を届けてほしい。電話で声を聞かせてほしい。逢えない夜には、そっと夢へと忍んできてほしい。貴方のその温もりを、たとえ夢でもいいから感じたい。叶うかもわからない、そんな願いを抱きながら。今日も今夜も空を見上げる。

#077

「月ってさー」「うん?」「誰のものだと思う?」「普通は地球の衛星ですとか、各神話の神様のものとか言うところだけどね」「普通はなぁ」「違うって言いたそうな」「月はウサギのものじゃないかと思うんだよね」「その心は」「月にでっかくペイントしてあ…

#076

終わりが近付いている。優しくて、儚くて、甘くて残酷な別離の時が。小さくて頼りない蝋燭の灯火はゆらゆらと揺らめいて二人の顔を照らしていた。言葉もなく、ただ確かめ合うように絡めた手指。一緒にいられる幸せを噛み締めてた夜。

#075

この小さな小さな灯火が消える時。私は貴方の目の前からいなくなる。哀しまないで、だってそういう契約だもの。最初からわかっていた約束。でも今夜は、今夜だけは特別。世界に灯った光の最後のひとつが消えてしまうまでは、貴方の傍にいられるから。

#074

彼女に見られたら困るもの。趣味や好みがまるわかりになる本棚。片付けるのが苦手なタンスの中。パソコンのブックマーク一覧。彼女へと宛てたメールの数々。……恥ずかしいんだよっ。

#073

「さて、どうしてくれようこの大量」「だって必要っていうから」「だからって限度ってものがあるでしょが」「たくさんあったら綺麗じゃない」「それは否定しないけど」「みんなで点けたらきっと楽しいよ」「星ならぬロウソクの火に願いを、ってとこか」

#072

貴方といる時間が好き。貴方と呑むのが好き。「どうして?」それを聞くのは野暮や無粋ってものじゃない? 好きだったり楽しかったりするものを説明するのに、理屈っているの?「それもそうか」それくらい、貴方が好きなのよ? これって遠まわしすぎる?

#071

貴方の声を聴かせてください。貴方の言葉を聞かせてください。私は、貴方の思いを、想いを伝える為にここにいます。表現する為にここにいます。だから、どうぞ、躊躇わないでください。せめてこの場だけでも。自分を偽らないでください。ウェブからネットか…

#070

なにものにも染まらぬ色、白。情念の赤に染まりしは毒の花。されど染まらぬ孤高の色は何を示さん。何を遺さん。真白き純白の曼珠沙華……其は悔恨ではなく儚き望み、願いを映し鏡花。

#069

最近手を抜いてない? 私だけやきもきしたくなくて、今夜はおかえりも言わないで狸寝入り。溜息が聞こえた後、不意打ちみたいに唇に柔かな熱の感触。吃驚して目を開ければ一面に優しいキャンドルライト。こんなムード出されたら怒れないでしょ、ばか。

#068

【ただいまストライキ中につき、留守にしております。ご用の方は絵馬にメッセージをお願い致します】古い馴染みの神社に行ってみれば、そんな貼り紙がしてあった。おいおい、神無月にはまだ早い。はよ戻ってこーい。

#067

紅い果実がひとつ、ふたつ。良く熟れたそれは血色のようで。緋い果実がみっつ、よっつ。滴り落ちる雫は酷く苦い。赫い果実がいつつ、むっつ。ああ、甘美へと至るには足りない。だから、くださいな……貴方のその首を。女の情念が哀しいまでに染みついた、その…

#066

なんだかんだと元気にやっている様子に安堵の吐息を零せば、彼と目が合った。なんかだ気まずそうな気恥ずかしそうな彼。もう大丈夫。彼女の今の居場所はここなのだから。けれどこれだけは許してもらいましょ。別れ際、彼の額へのキス。貴方に祝福を。……あら…

#065

猫は言う。君の嗤い方はつまらない。ならばいっそ、こうしてはどうかね。そうして箱を逆しまに返す。感情がそのまま表に出たかのようにむっつりとした顔になった。忙しい君には不機嫌なくらいがお似合いだよ。揶揄するように嗤えば、猫はするりとどこかへ消…

#064

「せんぱいのご飯おいしーんですよー?」「あら、こっちでも作ってもらってるの? 仕方ない子ね」「だって料理できないんですもん。えへん」「威張るな!?」「あらあら」「つか、こいつ躾し直した方が良くないか?」「せんぱいひどーい」「うふふ」サバトと…

#063

ぱん、と乾いた音が響く。俺の頬を張り飛ばした彼女は泣きながら走っていった。ここで追いかけられたらいいんだろう。理屈じゃわかっているが、体が動かない。感情が沸かない。来る者は拒まず、去る者は追わず。だからわからない。全てを投げ出せるほどの恋…

#062

主様が帰ってこない。午前様どころか朝帰りどころか、もう昼過ぎだ。心配を通り越して呆れ果て、書物の整理を終えた夕刻にやーっと帰ってきた。一言叱りつけてやろうとしたその矢先、鼻先に突き出されたのはこの季節の果実。「一緒に食べようね」よく見れば…

#061

空から音の欠片が降ってくる。星の光と一緒に降ってくる。音の欠片をたくさんたくさん集めたら、とても澄んだ音になった。音をたくさんたくさん集めたら、とても綺麗な音楽になった。音楽に星の光を振りかけて、宇宙とワルツを踊ろう。

#060

せんぱいが二人。せんぱいが二人。何回指折り数えても、せんぱいが二人。あっちとこっちのせんぱいで、二人。お菓子を食べつつ考えていたらこんがらがりそうです。せんぱいは優しく撫でてくれて、せんぱいはお茶の準備をしてて。でもなんだろう。不安で不吉…

#059

海を泳ぐイルカになりたい、なんて願っていたのはどれぐらい小さい頃だったろう。あの頃は無邪気に、ただイルカが好きでそう言っていたはずなのに。今は違う気持ちで同じ事を願ってしまう。流した涙に溺れてしまう前に、イルカになりたい。涙の海を乗り越え…

#058

「大丈夫、出てくるから」「何で言い切れる……って、近っ!?」「しー」「……せんぱい? 一体何が……ってなにしてるんですかこの変態スケベえっちー!?」「ほら出てきた」額寄せた彼女は愉しそうに笑うが、俺は酷い罵声を浴びせられた挙げ句、いつも俺がするよ…