2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧

#596

鋼鉄の乙女は今日も規律正しく折り目良く礼儀作法に則って仕事をこなす。寒い日々の狭間の小春日和。猫を膝に載せたままうたた寝していた主の寝顔を見つめていたが咎められた乙女は無機質な表情を微かにしかめた。「……主様、私の寝顔を見ておいて、御自分の…

#595

鋼鉄の乙女は今日も規律正しく折り目良く礼儀作法に則って仕事をこなす。強制休暇のおかげか回復した乙女はかいがいしく主と猫の世話を焼く。猫と同列にされ憮然とする主の様子に乙女は無機質な表情を微かに綻ばせた。「……主様、あの、もしかしなくても妬い…

#594

その剣はくれないの髪の少女と共に生まれた。最初は短剣ほどしかなかったが少女の成長に沿うよう、その姿形を変化させていく。玩具めいた外見は洗練され、刀身はしなやかな柳の如く薄く細く、そして鋭い。それを魔剣と揶揄する者が多くとも少女は剣を離さな…

#593

鋼鉄の乙女は今日も規律正しく折り目良く礼儀作法に則って仕事をこなす。主より問答無用で休息を言い渡されてしまった乙女は一匹の猫と共に寝台の中。良く様子を見に来る主に乙女は無機質な表情を微かに綻ばせた。「……主様、ご心配を掛けてしまっているのに…

#592

聖都にその人ありと謳われた男、神に仕えし聖騎士の銘を持つ者が堕ちてから幾久しく。守護と癒しの力は穢れと成り果てた。悪夢と邪気を操る男は戯れに偽りの命を吹き込む。だが相手が悪かったというべきか。仮初めの命を与えられヒト型を為した葡萄女に付き…

#591

旅立ちはいつだって突然だ。新年早々に正月気分も抜け切らない今日。母さんからいきなり変身ツールを渡された。これは父さんの形見で、命懸けで封印した秘密結社が甦ったんだという。……どうして僕なんだろう。兄さんの方が向いてそうなのに。こうして僕の旅…

#590

鋼鉄の乙女は今日も規律正しく折り目良く礼儀作法に則って仕事をこなす。しかし今日に限って乙女の仕事振りに常のキレがない。とある予測に思い至った主は問答無用で寝台へと押し込むが、乙女は無機質な表情を微かに曇らせた。「……主様、あの、怒っていらっ…

#589

未練かな。未練なんだろうな。ずっとすれ違ったままだったあの人と交わす、他愛のない言葉。そこにきっと以前のような感情はないと思うのに。わかっているのに。それでも、まだ。言葉の触れ合いさえ愛おしくて。

#588

「しぶんぎってなに?」「しぶんぎ?」「しぶんぎ」「どこからそんな言葉覚えてきたんだい?」「りゅーせーぐんだって、てれびでいってた」「ああ、四分儀座流星群の季節なのか。四分儀は昔の天体観測道具のひとつだよ」「それがせいざなの?」「物への感謝…

#587

儚い涙を流し続ける貴方を抱き締める腕を、僕は持たない。

#586

風邪引きは布団で強制的にふとつむりの刑に処される。でも鬼ではないので、時々スポーツドリンクや蜜柑が差し入れされる。それらも嬉しいけれど、添い寝はしてくれないのかと半分冗談半分本気で言ったら殴られた。病人なんだからもっと労わろうよ……早く元気…

#585

時の精がひょっこりと顔を出す。どこか恥ずかしそうな、誇らしそうな。それを先導とし、ゆるりと衣の裾野を翻し姿を見せたのは新たなる歳神だ。入れ替わるように交代していく神々を迎えるのが我が家の仕事。さようなら、去年。はじめまして、今年。どうか良…

#584

鋼鉄の乙女は今日も規律正しく折り目良く礼儀作法に則って仕事をこなす。時間が規則正しく刻まれていく。時を、分を、秒を。乱れる事なく刻むそれはやがて鼓動と重なる。主の顔を見上げた乙女は無機質な表情を微かに綻ばせた。「……主様、共にこの時を過ごせ…

#583

鋼鉄の乙女は今日も規律正しく折り目良く礼儀作法に則って仕事をこなす。爆ぜる暖炉の炎の前、主が何も言わぬまま、ただ二人で毛布に包まれる事に乙女は無機質な表情を微かにしかめた。「……主様、あの、これはお仕置きでしょうか。私があのような事を言った…

#582

そのタイポグラフィは出番のなさに憤慨していた。本来ならば出番が多くて然るべきだというのに相方のせいで機会にも恵まれない。その相方というのが、まるで全てを呪い怨んでいるかの如くくすんでいるのだ。お互い本来の姿を取り戻せるのはいつの日か。きら…

#581

鋼鉄の乙女は今日も規律正しく折り目良く礼儀作法に則って仕事をこなす。いつもの喧噪が嘘のように静まり返っているのは、屋敷の中も休暇に入ったから。暖炉の前で食事を共にしながら乙女は無機質な表情を微かに赤らめた。「……主様、あの、その、今夜は一緒…

#580

さくさく。道すがらの霜柱を踏んで歩く。きしきし。水たまりの氷を踏んで歩く。ぎしぎ……ばりん。凍った湖の上はさすがに危険だった。氷の乙女に熱を奪われ抱かれ、沈みながら光へと手を伸ばす。館の綺麗な魔女が呆れて小言混じりにきっと助けてくれるから。…

#579

孤島に住まう魔女は様々な精霊を使役する事で有名だ。その力は時さえ凌駕するらしい。その魔女へ助力を求めるべく旅立った騎士の船は容易く難破してしまう。「魔女様、彼を助けるたいのですが」「律を歪めるのは好まぬが、他ならぬ刻精の頼みだ」沈みゆく騎…

#578

あなたが私にくれた物。手紙、電話番号、花束、ピアス、指輪。……そして、約束。「必ず帰ってくるよ」と言ってあなたは旅立った。ねえ、今どこにいるの? 何をしているの? 私はあなたを待って少しずつ皺を刻んでいく。 #twnovel アストロノーツの恋は地球に…