勇者と魔王

#400

彼女は泣きながら告げた。「私、貴方の敵なの。魔王なのよ」薄々わかっていた事だった。どこか否定したかった。女の子を泣かせてしまっている僕の、どこが勇者だろう。震える小さな身体を強く抱き締めた。「二人で暮らせる世界を作ろう」勇者も魔王も関係な…

#399

私は泣きながら告げた。「私、貴方の敵なの。魔王なのよ」告げずに去れば再会の時に彼を深く傷つけてしまうから。だから今告げる。これ以上優しくしないで。貴方の手を鈍らせないで。私は敵なのだから。なのにどうして抱き締めるの。「二人で暮らせる世界を…

#376

身分と魔力を隠して出会ったあの人は、勇者だった。この世界を救うべく、魔王を倒すべく旅をしている途中なのだという。ああ、そうか……貴方も今までの勇者と同じように、私の胸に剣を突き立てようという人なのか。知らず、涙が零れた。あの人が心配してくれ…

#315

どうすれば貴方に私を刻めるだろう。私を乗り越え、新たなる治世への架け橋となるだろう貴方。その時きっと私を忘れてしまう。だからこそ。貴方に斃される最期の時、呪いを忍ばせよう。永劫、私を忘れぬように。喩えそれが貴方を苦しめようとも。貴方は勇者…

#299

勇者は魔王に恋をした。赦されざる事と知りつつ恋をした。魔王を倒す事は簡単。けれどそれは相手の命を奪うという事。好敵手が如く幾度斬り結び、幾度月夜を迎えたか。斃れる事も斃す事も望まぬ勇者は覚悟の一計を案じた。魔力を奪い去る秘薬を唇に、想いの…

#157

「人生なんてゲームみたいなもんさ」それが彼の口癖だった。だから私は。「じゃあ私がラスボスになってあげる。リセットもできない、クソゲーにするも神ゲーにするも君次第」「ちょ、おま……」「だから、倒しに来てね?」こうして私は魔王になった。世界の敵…