#279

目当ての書架は奥まった場所にある。書籍を取ろうと手を伸ばしたその瞬間。私の腕は引かれ、強い力に抱きすくめられた。後ろから回された腕、首筋にかかる熱い吐息。誰か、と叫ぼうと動いた唇は指に蹂躙された。咥内に感じるのはねっとりとした鉄錆の味。温かい血は一体誰のもの。