#312

貴方のネクタイを私の手が緩める。貴方の指先が私のブラウスのボタンに触れる。微かに響いていくのは互いの衣擦れの音と、熱の吐息だけ。薄い布越しに感じる体温に触れて、戸惑いごと引き裂いて。触れ合う肌に、躯に、貴方を刻み込んで。痛みでもいい……貴方を忘れない為に。