#158

ぱちん、と乾いた音を立てて懐中時計の蓋が開く。螺子巻き式のそれは壊れてしまってから久しく、いくら竜頭を巻いても動かない。まるでそこで時が止まってしまったかのようだ。彼が逝ってしまってからどれ程経っただろうか。時を刻めない時計と、私の心。また季節が、巡ってくる。