鋼鉄の執事

#793

それは突然だった。空を切り裂いて響く音は紛れもなく殺気を孕むのは己を屠る気満々だ。「理由が思い浮かばないのだけれど?」「理由はいりません。私が貴方を嫌いだという事で充分です」「酷いなぁ」鋼鉄の執事の襲撃とも言える夜這いはこうして失敗した。…

#736

「昔々、さる国ではたった数百人で数万もの軍勢に立ち向かった、勇敢な者達がいたそうだ。今宵の私はそれにあやかるとしようか」男は己を取り囲む異形らを一瞥すればそう嘯き、白手袋の具合を確かめた。こちらは単騎、あちらは百にも満たず、といった所か。…

#684

「ホワイトデーのプレゼントだよ」「頂く理由がありません」「受け取ってくれないか」「バレンタインに何も差し上げてません」「渡したいから渡すのに」「結構です」「相変わらず冷たいな」「とっとと仕事にお戻りあそばせ」鋼鉄の乙女の牙城は容易く崩れず…

#680

久々に戻った屋敷で酷い目に遭った。まさかこの私が不覚を取るとは。いや、それに見合うだけのものはあったが。さて、戻りたるは眠らない不夜城都市。異形と異能の跋扈する街。今宵の獲物は夢魔の群れ、相手にとって不足なし。──白手袋を嵌めた鋼鉄の執事は…

#549

眼下に広がる広大なる不夜城都市。眠らない街は異形の棲まう場所であり、異能が集う場所でもあった。そんな中を颯爽と歩く男が一人。「さて。主様は何故私を御用向きに出されたのやら。確かに『彼女』より私向きではあるのでしょうが」微かな笑みを浮かべた…